(何で、どうして?)
私は、堪らずに彼の方を向いた。
見慣れた眼鏡を掛けた五十嵐は、教科書を見つめ続けていた。
「…っと………今、まで…の……」
たまに彼の口から音声が発せられるけれど、それは今までに無い程つっかえていた。
きっと、私が聞いた中で1番酷い音読だった。
「……っ……えっとー…」
段々、教室が騒がしくなってくる。
「何やってるの五十嵐、早く読んで」
女子の、催促をする声。
「怜音、まだ?」
「ねえ、早くってば!」
不思議そうに顔を見合わせながら、2人の女子がそう攻め立てる。
「まだかよ、俺が読もうか?」
ある男子は、自分の方が読めるからと言って手を挙げている。
(駄目、そんな事を言わないであげて)
私は、必死に心の中で訴えかける。
(五十嵐は、頑張ってるの。読もうと頑張ってるの)
確かに、眼鏡をつけているのにここまで読めていないのはおかしいと思うけれど。
ただ単に、緊張しているだけかもしれないし。
だから。
(止めて。私は、五十嵐の声を聞きたいの)
それでも、声には出せない。
けれど、私は彼の声が聞きたいのだ。
その思いだけは、変わらない。
(五十嵐、頑張って…)
私は、堪らずに彼の方を向いた。
見慣れた眼鏡を掛けた五十嵐は、教科書を見つめ続けていた。
「…っと………今、まで…の……」
たまに彼の口から音声が発せられるけれど、それは今までに無い程つっかえていた。
きっと、私が聞いた中で1番酷い音読だった。
「……っ……えっとー…」
段々、教室が騒がしくなってくる。
「何やってるの五十嵐、早く読んで」
女子の、催促をする声。
「怜音、まだ?」
「ねえ、早くってば!」
不思議そうに顔を見合わせながら、2人の女子がそう攻め立てる。
「まだかよ、俺が読もうか?」
ある男子は、自分の方が読めるからと言って手を挙げている。
(駄目、そんな事を言わないであげて)
私は、必死に心の中で訴えかける。
(五十嵐は、頑張ってるの。読もうと頑張ってるの)
確かに、眼鏡をつけているのにここまで読めていないのはおかしいと思うけれど。
ただ単に、緊張しているだけかもしれないし。
だから。
(止めて。私は、五十嵐の声を聞きたいの)
それでも、声には出せない。
けれど、私は彼の声が聞きたいのだ。
その思いだけは、変わらない。
(五十嵐、頑張って…)



