「……五十嵐、久しぶり」


私は先程と同じくそっと扉を閉め、せかせかと五十嵐の居る横のテーブルに荷物を置いた。


もしゆっくり歩いたとしたら、私はすぐに逃げ出してしまうと思ったからだ。


「安藤、あの…この前はごめんね」


「あんなの、全然大丈夫だよ。少し驚いただけだから」


私は、綺麗に作った偽の笑顔を彼に見せる。


後ろで組まれた私の手は、制御出来ない程震えていた。


もう、痙攣と言ってもおかしくないかもしれない。


五十嵐を見ると、嫌でもあの日の会話を思い出してしまう。


けれど、彼には私の秘密を知られたくないから。


私は、曖昧な笑みで誤魔化していた。



「何か、俺凄い悪い事言っちゃったみたいで…。あれ、俺的には褒めてたんだよ…」


五十嵐が、俯きながらそう言う。


彼は、本当に反省している様だった。


「うん、分かってる。…ありがとう、でももう言わないで」


私は笑みを絶やさずにそうお願いをする。


「うん…」


五十嵐はこくんと頷いた後、ぱあっと太陽の様な笑顔で私の方を見上げてきた。


「今日から、係に参加してくれるの!?」


私は椅子に座りながら頷いた。


「うん、もちろん」


「本当っ!?良かったあー」


五十嵐は私の言葉を遮ってまでして、嬉しそうに喜びを表現した。