(えっ、切っちゃうの!?)


私は慌てて


「待って下さい!」


と呼び掛けた。


けれど、


『お願い、しますっ……』


大ちゃんの声の方が、1歩早くて。


『はい』


その女性の声を最後に、通話は切れた。



プーッ…プーッ……


電話の切れた音だけが、私の部屋の中に響いていく。


あまりに急な事で、実際の私の頭の中はほんの少し混乱状態にあった。


(大ちゃんに電話したら、大ちゃんが倒れて。それで呼び掛けたら、電話が切れた)


私が今考えられるのは、ただ1つ。


(大ちゃん、大丈夫かな…?)


他の人の声から察するに、もう救急車は来たらしい。


だから、大ちゃんは助かるはずだけれど。


(倒れる程病気が酷かったのに、会いに来てくれたなんて…)


“ありがとう”


この言葉しか、言える事は無い。



しばらくベッドの上で固まっていた私だけれど。


私は、彼と約束した事を思い出した。


「明後日から、ちゃんと係仕事出ないとな…」


大ちゃんにも言われた事だし、自分でも薄々やばいと分かってきていた。


「五十嵐が怖くても、大丈夫」


そう、何度も何度も自分に暗示をかけて。



その日の夜は、あっという間に過ぎて行った。