それからも私達はぎくしゃくした関係が続き、私はあの日から図書委員会の仕事を休み続けていた。


そんな私の事を花恋だけは分かってくれる。


「大丈夫だからね」


そうやって優しく声を掛けてくれる花恋。



そんな彼女が、信じ難い事を口にした。


「ねえ、知ってる?怜音もね、図書委員の仕事を休んでるんだってー」


「えっ?」


放課後、私は花恋が音楽室でピアノの練習をするのに付き合っていた。


花恋は、私ですら題名も知らない様な曲を弾きながらそう言った。


今日は、図書委員会の係がある日。


けれど、私は当然のごとくそれを休んでいて。


「どういう事?」


私は、休まずピアノの上を跳ね回る花恋の両手を見ながらそう尋ねた。


「誰かが言ってたんだけどね、怜音は『安藤が戻ってくるまで図書委員の仕事はやらない』って言ったんだって」


ピアノの上に両肘をついた私は、大きくため息をついた。


「何それ…。五十嵐、何で行かないのかなー?」


五十嵐と会いたくないから、仕事を休んでいるのに。


その五十嵐までもが仕事を休んだら、元も子もないではないか。


「うーん…そうなんだよねー。別に1時間図書室に1人でもどうって事ないでしょ」


私は花恋の言葉に頷く。


直後、ピアノの音が大きくなった。


そしてまた小さくなり、大きくなる。