なないろ

「……ごめんっ」

やっとそれだけ言えた。

「何言ってんだよ。虹はずっと無理しすぎてたんだ。だから、いいんだよ」

力強い小椋くんの言葉が、熱い胸に刺さる。

甘えて、いいのかな。

「ありがとうっ……」

思えば朱里が亡くなってからまともに泣いたことはなかった。

我慢していたつもりはないんだけど……やっぱり小椋くんが言うように無理していたのかもしれない。

「虹、大丈夫か?」

「うん……見れてよかった」

鼓太郎もきっと私と同じ気持ちでこの絵を見ていたのだろう。

「かなり力入れて描いてたよな」

「うん……朱里、らしいね」

色使い、ちょっとポップな雰囲気。まさに朱里の絵。

「そうだな……」

黙って見つめる2人の弾けるような笑顔。そこに朱里の笑顔が重なる。

「こんな風に、また笑えるのかな」

朱里がいた頃の私は、こんなに幸せそうに笑っていたのだろうか。もう思い出せない。

「うん、もちろんだよ」

「……」

そんな自信なんてないよ。

「朱里は俺らのこの笑顔が好きだから、描いたんだよ。だから、大丈夫」

パシっと強めに喝を入れるように私の肩を叩く。

「そうだよ、大丈夫だよ。虹はもっと誰かに頼っていいんだよ」

小椋くんからも優しい言葉。

「……そんなこと言われたらまた泣きそう……っ」

「いーんだよ、泣いて」

「だって、泣いてたら朱里が心配、するっ」

こんな笑顔になんてなれないよ。

また頬に流れる涙を拭う。