「ところで、どうして西條さん?西條さんの噂なんか探してどうすんの?」


どうして彼女達の話題に私の名前なんかが?

私もそれが疑問だったから、もう少し耳をすませていると、最初の通る声の女の子のそれが少し低く不満気なものに変わった。


「知ってる?西條さんが最近よく佐尾と一緒に帰ってるの」

佐尾くんの名前が聞こえてきたその瞬間に、大げさなくらいに肩がびくりと揺れた。


「え、そうなの?西條さんが佐尾くんと一緒にいるところなんて見たことないけど。あの子、基本的に教室でもぼっちでほとんど誰とも喋んないじゃん」

「そう。でも、最近放課後に佐尾のこと誘っても、断ってひとりで帰っちゃう日がよくあるの。特に雨の日なんだけど……」

「雨?」

「そう。だから、雨の日は遊ぶの嫌なのかなーって」

「うん、気持ちはわからなくもない」