いつのまにか佐尾くんが、私の中の特別になってしまっていたから。


「放課後雨かな……」

私の視線の先で、灰色がかり始めた空を見つめていた佐尾くんがぽつりとつぶやいた。

その言葉に反応して、胸がドクンと大きくひとつ鳴る。


「傘、ある……?」

気付けば、佐尾くんのひとり言みたいなつぶやきに、そう問い返していた。

窓の向こうに視線を向けていた佐尾くんが、私を振り返って驚いたように瞬きをする。

変なこと訊いちゃったかな。

慌てて口元に手をあてた私を、佐尾くんが優しい目で見つめる。


「傘なら今朝、西條さんに返したよ」

「そうじゃなくて。自分の傘だよ」

「持ってないよ」

「午後から雨の予報出てたのに?」

「もし放課後雨降ったら、西條さんがいれてくれる?」