なんだかひどく落ち着かない気持ちになって、佐尾くんが視界に入らないように私のほうから目をそらす。

そして私のひとつ下の下駄箱を使っている佐尾くんが上履きを取り出しやすいように、その場から少し離れた。

カタン、と下駄箱の前に敷かれた簀子の上に佐尾くんの上履きが落とされる音がする。

彼の動きを耳で感じとりながら、私も離れた場所で上履きを落としてそろそろと片足ずつ足を通す。

先に上履きに履き替えた佐尾くんが、ゆっくり履き替えている私の背中の後ろを通り過ぎようとする。


「おはよ、西條さん」

そのまま佐尾くんが行き過ぎてゆくのを黙って見送っていたら、完全に行き過ぎてしまう寸前で彼が私に声をかけた。

いつもと変わらない、佐尾くんの声。

背後から聞こえてきたそれに、心を揺らしながら振り返る。