なんとなくだけど、佐尾くんなら直接傘を返してくれるんじゃないかと思ってた。

そのときに2日前の雨の日のことを謝まれたらと考えていたから、ちょっとガッカリした。

下駄箱からピンクの折りたたみ傘を取り出して、スクールバッグにいれる。

ついでに上履きも取り出して立ち上がったとき、昇降口のドアから佐尾くんが入ってくるのが見えた。

一緒に連れ立ってる友達はいなくて、彼ひとり。


話しかけるなら、今がチャンスだ。

どんなふうに声をかけるべきかと頭の中でいろいろシミュレーションしていると、下駄箱のほうまで近づいてきた佐尾くんと目が合う。

私に気が付いた佐尾くんが、何か言いたげに唇を開こうとする。

私も佐尾くんと話がしたいと思っていたのに、目が合った途端に急にそわそわと胸がざわつき始めた。