悩んで試行錯誤して、おかげで今は少しマシになったと思う。

明るい色のアイテムはなるべくシンプルなデザインのものを選ぶ。逆にシックな色合いなら少し遊んだデザインで華を出す。
たとえば甘いテイストのブラウスには、細身のパンツでバランスをとる。

似合うもの、好きなものをはっきりさせる。失敗もずいぶんしたけど、だんだん自信もついてきた。
やっぱりファッションは、難しくてだからこそ楽しい。好きなことを仕事にしている喜びを噛みしめる。

メイクの仕上げにリップをひく。ピンクだけどマットな質感で落ち着いた色味だ。
実は真紅のルージュに憧れてコスメカウンターに足を運んだのだけど。試しに紅を乗せた唇を鏡で見て、販売員の女性とともに「・・・」という感じになってしまった。
紅のもつ艶めかしさ、存在感に、完全に負けていた。最終的に勧められたマットなピンクに落ち着いたわけだけど。

いつかは紅のルージュが似合う女性になりたい。
でも今は、鏡の中に言い聞かせる。これが自分なんだから。

「お待たせ」
バッグを肩に引っかけてリビングの彬良くんのところへ早足で向かう。彼の目に魅力的に映っているといいなと願いながら。