それからは、仕事中もつい、なに作ろうかななんて考えちゃったり、彬良くんのことが好きでしょうがないみたいだ。
しかし———考えてみると、いわしの蒲焼き丼とか、ささみのチーズ大葉ロールとか、サバ缶をほぐして混ぜた卵焼き(ちょっと鰻巻き風)とか、うちのお母さんの料理って、美味しいけどそこには節約という言葉が見え隠れする。
それで文句なく健康体に育ったし、料理はきちんと教えてもらったし、文句があるわけじゃないんだけど。彼に作る料理、とはちょっと違う気がする。
たとえばバルサミコビネガーとか、そんな横文字の食材を使ったオシャレな料理ってわたしのレパートリーに・・・ない。
とりつくろってもしょうがないから、正直に会社に行く車中で彬良くんに打ち明けた。
「家庭料理ってそんなもんだろ。俺、おばさんが作ってくれるご飯、すごく好きだったよ」
おばさんというのは、うちの母のことだ。
「あんなのでいいのかな」
首をひねる。
「うちの母親はほとんど料理しなかったから、おばさんが作ってくれた気取らないご飯が、俺にとってもおふくろの味じゃないかな」
しかし———考えてみると、いわしの蒲焼き丼とか、ささみのチーズ大葉ロールとか、サバ缶をほぐして混ぜた卵焼き(ちょっと鰻巻き風)とか、うちのお母さんの料理って、美味しいけどそこには節約という言葉が見え隠れする。
それで文句なく健康体に育ったし、料理はきちんと教えてもらったし、文句があるわけじゃないんだけど。彼に作る料理、とはちょっと違う気がする。
たとえばバルサミコビネガーとか、そんな横文字の食材を使ったオシャレな料理ってわたしのレパートリーに・・・ない。
とりつくろってもしょうがないから、正直に会社に行く車中で彬良くんに打ち明けた。
「家庭料理ってそんなもんだろ。俺、おばさんが作ってくれるご飯、すごく好きだったよ」
おばさんというのは、うちの母のことだ。
「あんなのでいいのかな」
首をひねる。
「うちの母親はほとんど料理しなかったから、おばさんが作ってくれた気取らないご飯が、俺にとってもおふくろの味じゃないかな」



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)