極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました

失礼しまーす、と助手席にすべりこむ。

今日の彬良くんは黒のシャツにブルーデニムを合わせていた。シャツの腕にはさりげなく仕立ての証、「A.S」のイニシャルが刺繍されている。

「そよかを車に乗せるの初めてだな」
車を加速させながら、彬良くんが口にする。

「そういえば、そうだね」
二人で出かけたのは、多分大学のときが最後だ。

「わたし、少しは成長したんだと思う」
と言ってみた。だといいなっていう願いもこめて。
「ずっと彬良くんに甘えてたから」

思えば子どもの頃からずっと、遊園地に行きたい、渋谷とか原宿に行ってみたい、イルミネーションって綺麗なの?観てみたい、そんなことを言っては連れていってもらってばかりだった。

「じゃあまた、甘えろよ」

視線は前に向けたまま、そうつぶやいた彼の言葉に、思いがけず胸の鼓動が一瞬速くなる。
彬良くんにそんな風に言われたのは初めてで、どう返していいのか分からない。
一つだけ分かるのは、やっぱりもう今までの幼なじみじゃないんだ、っていうこと。