きみが青を手離すとき。




「おい、邪魔だ」

家に帰るとリビングのソファーで姉貴がブタのように寝転がっていた。

「いいでしょ。べつに」と、制服のままゴロゴロしていて、だから日に日に肉付きがよくなるんだ。なのに体重ばっかり気にして最近はダイエットしてるらしいけど、意味あんのかって感じ。


「ってか、なにそれ」

乱暴にドサッとテーブルに置いたビニール袋。
食い物の匂いに敏感な姉貴はすぐに中を覗き込んだ。


「林檎じゃん。なんで買ってきたの?」

知らない。帰り道に果物屋の前をまた通ったら、威勢のいいおっちゃんと目が合って、サービスするからと買わされただけ。


「しかも青い林檎ばっかり」

それも知らない。赤いやつのほうが多かったのに、なぜか青いのを選んでた。


「これで、なんか作れば」

べつに俺は林檎なんて欲しかったわけじゃないし。


「え、アップルパイとかってこと?ムリだから。この前もお菓子作ろうとして失敗したし……」

姉貴はごちょごちょと口を濁す。


どうやら最近彼氏ができたらしい。しかも姉貴には勿体ないぐらいの顔面偏差値。


「なんで彼氏はお前を選んだんだろうな。普通にもっといい人いそうじゃん」

「あんた喧嘩売ってんの?」

べつに。俺はただ素直な意見を言っただけだ。


「先輩は見た目で判断する人じゃないの。私の中身を知ってそれでっていいなって思ってくれたって……。ちょっと聞いてる!?」


俺は姉貴の言葉を無視してスタスタと二階の自分の部屋に向かう。そしてベッドに横になりながら、手には青い林檎がひとつ。


人は見た目じゃない?中身を知れば案外いいって?

俺は青い林檎を一口かじる。


「……すっぱ」

やっぱり赤いほうがいい。でも、まあ、想像してたよりは不味くない。