あたしにしか見えないらしいお客様に、関谷さんたちが怪しまないよう小声で話しかけてみた。


「あの、」


「はい」


芸能人みたいなキラキラスマイルで、耳心地のいい透き通った低い声が返ってきた。

いろんな意味でクラクラと眩暈がするよ。


「えっと……何か飲め、ますか?」


我ながら変な質問だと思ったし、もう接客って感じじゃないなぁと思ったけど、こんなことしか言えないよ、この状況……


「んー、無理そうだから、いいや」


「で、すよ、ね。えっと……」


「カップ持てないしねぇ」


「ですよねぇ……」



歯切れの悪いあたしをよそに、ユーレイさんは朗らかにそう言って笑った。