ふう、とひと段落してカウンターをひと拭きした時、その手を伸ばした先、一番端の席にお客様が座っているのに気がついた。


軽くウエーブがかった栗色の髪が綺麗で、色白でスタイルもいい大学生くらいの男の人。

こんなに目立つ感じの人にぜんぜん気付かなかったなんて、未来のカフェ店主として恥ずかしすぎる。


「あっ、申し訳ありません、ご注文お伺いしてませんよね!」


男の人はニッコリと首を少しだけ傾げて、大丈夫という風に肘をついた手をひらひら振ってくれた。


いい人で良かった。
でも怒られるより申し訳ない気持ちが倍増するんだよね。
こういう返しって。