四人で道を進むうちに、自然に役割分担が決まっていった。

 クレールは護衛らしく、常に先や周りの安全を確認する。カナリはレイの様子を気遣ったり食事作りや雑用と。彼女はその性格のお陰で少しうるさすぎる事もあるけど、いつも旅の雰囲気を明るくしていた。

 実際カナリがいなかったら、僕たちはすぐに不安と恐怖に負けてしまったかもしれない。

 クレールはいつも通り無愛想であまり話さないし、レイや僕もそれ程口数が多い方じゃなかったから。とにかく、カナリの明るさにはみんなが救われていた。

 レイは食事を作ったりみんなの様子に気を配っていた。カナリや僕が疲れたのを見ると、休憩を取ろうと言ったり、僕が不安で考え込んでいると、必ず声を掛けてくれる。

 大人しそうで何もできないような感じに見えるけど、一番しっかりした意思を持っていた。


 僕は――――誰よりも何も出来ないでいた。

 気も利かないし、手際もよくない。だからいつもカナリに怒られながら、使いっ走りみたいな事をするのが精一杯だった。

 勇者としてこれでいいのかと、疑問に思わなくもないけど。

 僕の世界では外を歩いていて動物に襲われる事も無いし、マッチやライターを使わずに火をおこした事も無い。食事を作った事ももちろん無かった。本当に、自分でも驚くほど何もできない。

 一人で何でも出来る気でいたけど、それは今の僕の世界だけの事。便利な道具や知識が無ければ、何も出来ないんだ。それに、洗濯も炊事も、みんなお母さんがやってくれていたから……

 自分がどれだけ色々な事に甘えていたのか、こんな所で気付かされてしまった。