おかしな質問だというふうに、クラスメイトは眉を歪めた。

 でも驚いたのは僕の方だ。僕はレイたちのいる世界に、何ヶ月もずっと行っていたはず。それなのに、ここではまだ終業式が終わったばかりだと言う。


 頭が混乱する。


「本当に大丈夫? 倒れた時、頭でも打ったんじゃ……」


 僕は慌ててそれを否定し、立ち上がった。まだ頭はふらふらするけれど立てないほどじゃない。

 どうやら僕がこの世界からいなくなっていたのは、ほんの数時間だったようだ。よく分からないけどあのボーダーは、時空をも曲げていたのかもしれない。

 それはあの世界の事が、夢だったかのように僕を錯覚させた。


「ねえ、聞いてもいいかな」


 僕はクラスメイトに言った。


「転校生はどうしてる?」

「転校生?」

「三日前、クラスに来たレイ……暁さんだよ」


 彼は僕の言葉にまた眉を歪めた。


「転校生なんて来てないよ? こんな夏休みがすぐの時期に、来るわけ無いじゃないか」




 ――――レイの存在も、消えてしまっていた。




 やっぱりあれは夢だったんだろうか。

 いや、夢じゃない。

 夢だなんて思いたくない。

 だってまだレイたちの顔が、鮮明に思い出せるのだから。


「本当に変だよ? 大丈夫? 神無月君」

「あ……うん、ごめん」


 もうすぐホームルームが始まるからと促され、僕は教室へ向かうクラスメイトの後ろを歩きだした。歩いているうちに、制服のポケットに何か入っている事に気づく。

 手を入れてそれを取り出すと――――