聖堂の中は広い大きなホールみたいになっていた。奥には小さな祭壇のような机があり、炎が幾つか灯されている。何人かの村の人がその祭壇に向かい膝を着き、祈る様に目を閉じていた。

 祭壇のすぐ前に、背の高い男の人が一人。

 男は僕たちの入って来た気配に気が付いて、振り返った。

 長身で体格もよく、聖職者が着るような丈の長い濃紺のローブを羽織っている。年齢は僕たちよりも大人だけど、おじさんとかおじいさんと呼ぶほどではなく、お兄さんぐらいだろう。鼻筋の通った精悍(せいかん)な顔つきをしていた。


「これはこれは! 勇者様の御一行でしたか!」


 低いよく通る声でそう言いながら歩み寄って来た男に、カナリは顔を見たとたん、あわてて叫んだ。


「だっ、大司祭様!」


 ――――だいしさいさま?


 その大司祭様と呼ばれた男は、僕たちの目の前まで来ると、カナリとクレール二人の顔をゆっくりと見渡した。


「聖女から話しは聞いています。クレール、カナリ、勇者様を迎える旅、共に彼を守り無事この聖堂へ送り届けてくれた事に礼を言います」

「大司祭様のお言葉、光栄です」


 カナリはいつもみたいな大雑把で乱暴な言葉では無く、びっくりする程上品な様子で頭を下げた。無愛想なクレールまで、少しだけだったけど同じように頭を下げていた。

 そんな二人に、大司祭と呼ばれている彼は穏やかな笑みで応える。大司祭様は次に僕に顔を向けると、今度は僕に対して大げさに敬うように頭を下げた。