クレールには部屋にいろと言われたけど、結局僕もじっとしてられなくて手伝った。レイやカナリも部屋から出てきて、僕と同じように手伝いに走っていた。

 僕が役に立ったかはわからないけど……

 でも、みんな自分たちの考えで助け合っていた。当たり前の事だけど、それが自然に出来るこの世界の人たちは、みんな優しい。


 被害は酷いものだった。かろうじて逃げ延びた村の人たちはほとんど怪我をしていたし、みんなアエーシュマに怯えている。


 そして何人も、亡くなっていた……


 一刻も早く、この不幸の連鎖を止めたい。怪我に呻き怯える人たちを目の当たりにして、僕はそう強く思わずにはいられなかった。


 食堂で僕たちが遅い昼食をとっていると、そこにジャンさんがやって来た。ジャンさんも明け方からずっと救助活動をしていた一人だ。服も体もドロドロに汚れて、誰よりも働いていた。

 でも、どうやらやっと着替えられたみたいだ。胸元を大きくはだけさせたり、だらしないのは変わらないけど、小ざっぱりとした服装になっていた。

 ジャンさんはクレールの隣に座ると、彼のお皿からおかずを一つ奪って口に入れる。そしてもごもごと食べながら僕たちを見渡した。


「みんなご苦労だったな。お陰で思ったより早く片付いた。助かったぜ、ありがとう」


 ジャンさんはそう言って僕たちに頭をさげた。

 治安隊の隊長なのに、彼はちっとも偉ぶらない。それがみんなに好かれている理由の一つなのかもしれない。

 僕も、そんなジャンさんをいつの間にか尊敬するようになっていた。