ジャンさんの基地へ来た翌朝、僕は部屋の外の騒ぎで目が覚めた。

 治安隊の人が大勢通路を行き交う物音、時折大きな声で指示を出している声もする。まだ夜が明けたばかりだ。何事かと思い、僕も眠い目をこすりながら着替えて通路に出た。


 ――――急げ! まだ怪我人がいる!

 ――――こっちを頼む!

 ――――誰か! 手を貸してくれ!


 バタバタとしている治安隊の人たちの中に、酷い怪我をした一般の人も混じっている。まるで何かに襲撃されたような惨状。


 一体何が起こったんだろう……


 激しい怒号の行き交う中に、クレールの顔が見えた。


「クレール!」


 呼び止めると、こちらに来てくれた彼の姿は、血や泥で汚れていた。


「何かあったの?!」

「近くの村に、アエーシュマが出た」


 ――――アエーシュマ


 夜明け前、僕がまだ眠っている時に現れたらしい。幸いにも被害はこの地下にある基地にまでは及ばず、村に残った怪我人を治安隊が救助している。


「クレールも助けに行ったの?」

「ああ、俺も治安隊だからな。お前は部屋に入ってろ。まだ片付くまで時間がかかる」


 クレールはそう言ってまた人波の中へ行ってしまった。




 騒ぎが落ち着いたのは、お昼を過ぎた頃だった。村に残った全員を基地に避難させ怪我人の手当て。壊された村の後片付けなど、治安隊の人たちはみんな休まず働いた。