「へえ~! じゃあヒイロの世界の子どもは、みんなその学校、って所へ行くんだね」


 今夜も食事の後、火を囲んでいろいろな話をしていた。クレールは聞いているのかどうか分からないけど、側で剣の手入れをし、ジャンさんは焚火を眺めながらお酒を飲んでいる。

 ちゃんと話を聞いているのは、レイとカナリだけだった。

 二人は、同じ年齢の子どもが集団で学ぶ『学校』の話しに興味があるみたいだ。この世界では学校どころじゃないから。同じ年齢の子どもがそんなに集まるなんて、想像もできないらしい。

 災厄の時が訪れる前も、勉強は一部のお金持ちの子どもが学ぶだけだったらしい。後のみんなは、家族や両親を助ける為、働くのだそうだ。


「ね、ね、ヒイロは『学校』で、好きな人とかいた?」


 女の子の話題は、どうやら何処の世界も同じみたいだ。教室でも女子たちがよく、そんな話をしていた。

 僕は呆れたようにため息をついた。


「そんなの、いないよ……」

「なんで? たくさんの人がいるんでしょ? 気になる子もいたでしょ!」

「さあ……?」


 僕が気になったのは、あの時転校してきた……

 ちらりとレイを見ると、彼女は優しい顔で焚火の炎を見つめていた。


 僕が話しに全く乗ってこないので、カナリはつまらなそうに頬を膨らませた。


「――――そういえばさあ、ジャンさん!」


 カナリは僕の反応が余程不満だったんだろう。話の矛先を何故かいきなりジャンさんに向けたのだ。


「ジャンさんとミュール様はどういう関係なの?」