その様子で、どうやら僕たちが治安隊に拘束されたのは公にはなっていない事が分かった。もし知っていたら、僕たちが現れただけで騒ぎになっていただろうから。

 建物の中へ入ると、あれよあれよという間にグラファイトに面会する流れになってしまった。できれば僕たちは彼に会わずに事を進めたかったが、ここで断るのも不自然だけど……

 みんな戸惑い、その後の行動を決めかねているうちに、前に来た時と同じ部屋へ通されてしまった。


「――――ねえ、まずいよね? このままグラファイト様に会っても……」


 グラファイトを待つ間、カナリは声を潜めてそう言った。ドアの所に二人ほど、見張りの様にガーディの人が立っていたけど、どうやら声は聞こえなかったみたいだ。

 カナリの言う通り、今グラファイトに会っても、何を言ったらいいのか僕にも分からない。まさか面と向かって、ジャンさんを解放してくれ、なんて言えないし。

 そんな事を考えていると、レイがポツリと言った。


「でも、グラファイト様の話を聞くのもいいかもしれない……私たちの事をどう考えているのか。それで自分も、これからどうしたらいいか決められる」


 レイは聖女として、これまでずっとガーディ教団を、グラファイトを信じてきた。

 だけど今回の事で、全てが変わってしまったんだ。

 民を守るべく機関が暴走を始めている様に、僕は感じた。だからレイも、自分がこれからどうするべきか、見極めたいんだと思う。

 レイの正義と、グラファイトの正義は、もう別の方向を向いている。

 もちろん、それは僕も同じだった。