「……お嬢さんのお母さんは、どんな人なのか、よければ聞かせてくれないかい?」


お妃さまは信じられない思いでいっぱいでした。


白雪姫が自分の正体に気がついていて、毒林檎を食べたくないから言っているのかもしれないとも思いました。


おそるおそる尋ねたお妃さまに、白雪姫は少し目を伏せて、囁くように話し始めました。


「お母さまは、本当のお母さまではないの。だからかしら。わたし、あまりお話ししたこともなくて。実を言うとね、少し……避けられているような気もするの」


いや、うん、避けてるけど。とお妃さまは思いました。


本当の母親ではないとすると、白雪姫の言う『お母さま』は、やっぱり本当に、まさかのお妃さまのことのようです。


「でもきっと、わたしがいけないのよ。今もね、道に迷ってしまって、こんな森の奥深くから帰れないでいるんですもの」

「えっ」


白雪姫は大変な方向音痴でした。


そもそも、一人で出歩いたことがないのですから、道が分からない森の中から一人で帰れなくても仕方ありません。


一生懸命お城に帰ろうとしましたが、うっそうと茂る森に、お城の方向が分からなかったのでした。