もう誰も、私を笑う奴なんていない。
こんなに綺麗に生まれ変わったんだ。
外見が変わると、表情まで豊かになるのを痛感する。
人は外見より中身という。
中身の人間性が顔に現れると。
でもそれなら、逆もあるはず。
外見から生まれる自信が、心まで優しくするんだ。
向こうから、桃子が歩いてくる。
すでに私に気づいているのに、気づかない振りで足元を見ながら小走りに廊下をやってくる。
私もああやって、下を向いていたんだ。
「篠田さん、おはよう」
あえて声を掛けると、えっ⁉︎と顔を上げたが、少しはにかんで「おはよう」と言った。
とても小さな声だったが、それだけでとても良い事をしたような気分になる。
絶対的優位だ。
優しく下を見下ろすことができるんだ。
けれど次の瞬間、私が見下ろされる番となった。
向こうから、桜庭さんが歩いてくる。
ひょっとしたら__?
挨拶をされるんじゃないか?
「渚」なんて気安く声を掛け、腕を取られて教室まで一緒に行くなんて、そんな夢に見ていた場面に出くわすのではないか?
桜庭さんは、すぐ目の前だ。
一瞬、目が合ったような気がする。
きっと、きっと今日こそは__。



