「えっ⁉︎」


驚いた私の声は、かき消されてしまった。


井沢さんたちグループの賑やかな話し声に。


それだけじゃない。


「渚、伊達眼鏡なの?」


「確か視力よかったよね?」


「かわいいじゃん」


これまで全く喋ったことのない、井沢さんグループの女子たちから、矢継ぎ早に声を掛けられる。


井沢さんなら分からないでもない。


少し会話をするようになっていたから。その井沢さんも、なんだか距離が一気に狭まって馴れ馴れしいが、私はすっかりグループの一員として迎えられていた。


ずっと、そうだったように__。


「渚‼︎なにしてんの?早くこっちおいでよ」


お昼の時間、いつもなら桃子と隅っこに静かに移動し、肩を寄せ合って食べるのだが、今日は井沢さんに明るく手招きされる。


桃子は、1人で隅に移っていた。


私を待つでもなく、寂しい表情でもなく、ただ1人で黙々と食べている。


しばらく見つめていたが、諦めて井沢さんたちグループの中に入った。


「なに見てたの?篠田さん?」


井沢さんに訊かれたが、どう答えていいか分からない。


「いっつも1人で食べてるよね。私はいいんだけど、ここに誘うと【ブス】が移るって、みんなが嫌がるから」


これにも、返す言葉が出てこない。


ご飯の味が分からないほど、私はずっと桃子のことを気にしていた。


友達でなくなった桃子を。