「あの、桃子、昨日は本当にごめんな__」
最後まで言い終わらないうちに、桃子は駆け出していった。
まるで、逃げ出すように。
やっぱりまだ怒っている。
それに加え、二重瞼にした私に驚いたんだ。
すぐに追いかけようとしたが、それをしなかったのは呼び止められたからだ。
「渚‼︎」
と__?
えっ?と振り返る。
このクラスの中で、私を名前で親しげに呼ぶのは、桃子だけ。
それ以外は、呼ばれもしない。
ここ最近、絵を通じて仲良くなった井沢さんでも「葉月さん」としか呼ばれていないのに?
「渚、おはよう‼︎」
その井沢さんが、私に言った。
とても親しげに。
「あっ、おはよう」
「ちょっと、伊達眼鏡?よく似合ってるよ」
「__ありがとう」
お礼を言いながら、まじまじと井沢さんを見つめる。
急に下の名前で呼ばれるほど、仲良くなっただろうか?
それに__井沢さんは、気づいてない?
急に私が眼鏡をしてきたのも、二重瞼になったのにも、これといった反応がない。
「なに?私の顔に何かついてるー?」
「ううん、違うんだけど」
「今日の渚、なんか変だよ?」
話せば話すほど、違和感だけが大きくなっていく。
やがてその違和感の正体がはっきりした。
井沢さんの言葉によって。



