伊達眼鏡。
私だって【オシャレアイテム】の1つや2つ持っている。
でもまさか、こんな使用目的だとは思わなかったが。
「おはよう」
朝の挨拶が行き交う中を、眼鏡姿の私は俯き加減で足早に登校する。
同じクラスの生徒を見かけると、とっさに顔を背けた。
教室が見えてきたが、しばらく扉の前で佇む。
からかわれるだろうか?
けれど、お母さんは気づかなかったから、もしかしたら__?
ゆっくり戸を引き、中に入る。
朝の何気ない空気が一瞬、張り詰めた__気がした。
わずかに視線を集めた時は、ドキンと心臓が跳ね上がったが、みんなそれぞれの会話に戻った。
私の不自然な眼鏡や、その奥に隠された二重瞼にも無関心なようで。
1つ息をはき、席につく。
そうだ、忘れていたけれど、私は存在しないんだった。
この時ばかりは、クラスメイトとして扱われないことが有り難い。
私を唯一、友達と慕ってくれるのは桃子だけ。
謝らなければ。
そして、新しい私を少しでも受け入れて欲しい__。
「あっ、おはよう、桃子」
教室に入ってきた桃子に声を掛けると、かつての友人はギョッと目を見開いた。
心底、驚いている。



