ギュッと目を瞑(つむ)った。
手探りで机の上の鏡を手にすると、ゆっくり、本当にゆっくりと瞼を開く。
寝起きの涙が頬を伝う中、私は新しい自分と対面した。
二重まぶたの私と。
ダイエットで余分な脂肪が取り除かれたこともあり、
綺麗な二重瞼がそこにあった。
目元がすっきりとし、顔の印象が全く違う。
「___綺麗」
思わず声が漏れた。
小刻みに震える指先で、瞼を撫でる。
自然と笑顔がこぼれたが、周りはどう反応するだろうか?
整形したと軽蔑されるんじゃないか?
特に桃子にとっては、裏切り行為に近い。
もう友達としての縁を切られるかもしれない。
その覚悟は、私にはなかった。ただ怒りに任せて願いを叶えてしまっただけで__。
「渚‼︎ご飯よ、早く起きてらっしゃい‼︎」
お母さんの声が、ズキンと胸に刺さる。
そうだ、お母さんになんて言ったらいい?
痩せたから、そのお陰で二重になったと押し切るしかない。
出来るだけ前髪を下ろし、俯き加減で食卓につく。
「早く食べちゃって、片付かないから」
「あ、うん」
返事をした時、お母さんとバッチリ目が合った。
しばらく見つめ合う。
「あ、あの、お母さん、これは、その、整形とかじゃなくて__」
「また痩せた?食べ盛りなんだから、ダイエットとかやめなさいよ」
そう言って、お母さんはにっこり笑っただけだった。



