1年⁉︎
スマホを手に、私は固まった。
1kg痩せるのに、寿命を1年も差し出すのか?
たった1kgなのに⁇
フリーズしたまま、ベッドに腰掛ける。
3日ならいいけど、1年はないだろう。
価値が釣り合わない。
それをいうなら、たとえ1日でも命と釣り合うものなんてないけれど。
「渚、ご飯よー‼︎」
お母さんに呼ばれ、返事をする代わりにスマホを手放した。
正直、あんまり食欲はなかったけど__。
食卓に並ぶのは、私の好きなものばかり。
「なにこれ?なにかの記念?」
「そういうわけじゃないけど、ここ最近、なんだか渚が明るくなった気がするから、お母さんも張り切っちゃったの」
「そうなんだ」
嬉しそうに話すお母さんの手料理は、私の胃袋を刺激する。
私がこんなに太っているのも、そのせいだ。
けれど一口でも食べ始めると止まらない。
さっきまで体重のことで悩んでいたのがウソのように平らげ、その後しばらくして、お風呂に入る。
余裕でつまめる脇腹のお肉。
風呂上がりに乗った体重計は【82kg】を指し示していた。
食べ過ぎた罪悪感が襲いかかる。
鏡にうつる、まん丸の顔。
今にも破裂しそうだ。
でも私は、ずっと、これから先ずっと【私】なんだ。
嫌でもこの顔と付き合っていかなければならない。
つまり一生、ブスのままだということ。



