子供たちが大きくなり、私たちの元を巣立っていく。


これからは、夫と2人。


静かな余生を送るはずだったのに、武が病に倒れた。


手の施しようがなく、見る見るうちに弱っていく。


私の最愛の人。


武は色んなことを私に教えてくれた。


過去に囚われていた私に、未来があるのだと。


こんな私でも、愛される価値があるのだと。


またいつか、きっと会えるのだと。


「ありがとう、あなた」


私は夫を看取った。


1人になった私を見兼ね、子供たちが引き取ると言ってくれたが、年寄り扱いされるのはごめんだ。


田舎で第2の人生をスタートさせる。


アトリエを作り、畑を耕し、絵に描くことに明け暮れた。


それでも年を取る。


ある朝、刺すような痛みが胸を突き上げた。


キャンパスごと倒れた私は、これでようやく夫と会えるのだと思った。


約束したからだ。


病院に運ばれ、難しい手術をしていること、子供たちや孫が心配そうにしていること、どうやら一命を取り留めたことなどが、どこか遠くから分かった。


娘の元に引き取られることとなる。


ひ孫がよく私の元を訪れた。


「おお婆ちゃんは、もう100歳なの?」


ああ私はもう、100歳なのか__。