京子が死んだ。


少し前に、アプリに登録した【井沢京子】が。


他にも桃子の口から告げられる名前は、どれも私がアプリに登録した名前ばかり。


だから私が生き延びた。


私だけが__。


私のせいで起きた火災で、逃げ遅れて焼死した。


寿命を、奪い取ってしまったんだ。


意識が、遠のいていく。


「今はゆっくり休んで」


桃子の声が聞こえた。


休んでいいのだろうか。


地獄に行くはずだったのに、生かされてしまった。


犯人は三鷹裕也。


交際のもつれからか、私を道連れにしようと理科室に火を放った。


ポリタンクを持って廊下を歩く裕也が、生徒たちに目撃されており、桃子の証言などから決定的となる。


けれど、いくら私が悲劇の被害者だとはいえ、たくさんのクラスメイトが亡くなった。


発端は、この私だ。


アプリのことは公になっていなくても、原因を作ったのは葉月渚である。


両親は転校を勧め、学校側も了承したが、私は断った。


桃子と離れたくなかったからだ。


それに私には責任がある。


生きなくちゃいけない、責任が。


「おはよう、渚」


「桃子、おはよう」


さすがに、事件後初の登校は緊張したが、誰も私を責め立てることはなかった。


それはきっと__私の顔に火傷の跡が残ったからだ。