瞬く間に炎が舞い上がり、裕也を包み込んだ。


「ぐぁああああー‼︎」


よろよろと、それでも私に手を伸ばして近づいてくる。


そして、その顔が溶けていく__。


創り上げた【仮面】が溶けて剥がれていく。


中から現れたのは、裕也と似ても似つかない顔。


目は小さくて、鼻が異様に大きく、唇が腫れぼったい。


頬が膨れ上がり「渚__」と私の名前を呼んだ拍子に見えた口元は、前歯が抜け落ちて黄ばんでいた。


炎の風が吹き荒れ、一瞬、裕也が見えなくなる。


床に撒き散らしたガソリンに引火し、理科室は今や炎の海と化していた。


慌てて背を向けて、入り口まで走る。


何度もガソリンで滑りそうになったが、扉までたどり着くと__。


「あ、開かない⁉︎」


そういえば裕也が中から鍵を閉めていた。


か、鍵はどこ⁉︎


「な、渚、俺と一緒に__」


すぐ後ろで声がし、振り返った。


火だるまになってもなお、私を求めて彷徨っている裕也。


顔だけじゃなく、その体型も見る見るうちに変わっていく。


腹がせり上がり、手足が短くなり、どこからどう見ても【ブサイク】で醜い裕也は、見る影もない。


いや、それこそが本物の三鷹裕也なんだ。


本当の姿。