【02:59】
3時間を切った時、ちょうどチャイムが鳴った。
生徒たちが教室から出る、ため息が聞こえてくる。その後の喧騒も、理科室に身を潜める私にも届いてきた。
ここなら見つからない。
見つからないが、どうする術もない。
逆にいえば、ここに居ては私は助からないんだ。
お昼の時間。
桃子は京子たちと食べているだろう。
私のことを心配はしているが、同じ心配でも、命を案ずる私とは雲泥の差。
しかも桃子は、自分で道を切り開いている。
周りを信じ、思いやりを持って接することで、人望を掴んでいった。グループが膨れ上がっていくと、不思議なことに【ブス】やらと罵られることもない。
それは、私がいくら命を課しても得られるものじゃなかった__。
私が得たものは、外見の美しさだけ。
それに心が伴ってなければ意味がないことに、ようやく気づいた。
残りの寿命が【02:42】になって、ようやく。
でも、私は死にたくない。
あいつのせいで死ぬなんて、真っ平ごめんだ。
なんとかして寿命を、なんとかして__。
「あっ__」
ふと思いついた。
そうだ。
まだ1つだけ手がある。
1人だけ【登録】していない奴がいるじゃないか?
寿命を奪うことに罪悪感を覚えないですむ奴が。



