「痛いか?」


裕也が、私の脇腹をぐりぐりとつま先でねじり込む。


痺れるような痛みに、意識がぼんやりしてきた。


「でも渚が悪い。俺は渚に殺されるなら本望なのに」


「やめ、て」


「俺を殺さなかった、渚が悪いんだからな」


やっと私の体から、足が下される。


あまりの痛みに咳き込んで、自分の体を抱き締めた。


視線の先にはナイフが落ちており、それをゆっくり拾った裕也が向き直る。


「俺にお前を殺させないでくれよ」


静かにやってくる足が、なにかを蹴った。


手元に転がってきたのは、スマホだ。


慌ててひっ掴み、指を画面に這わせる。


「助けを呼んでもムダだ。2人とも死ぬまで終わらない」


そう言って、私の手の甲を踏みつける。


指が反り返り、激痛が襲ったが、それでも私は指を休めなかった。


助けを呼ぶんじゃない。


助けなんか必要ない。


私にはアプリがある。


願い事を叶えてくれる、神のアプリが。


【三鷹裕也を消す】【20年】


望んでいた画面が開いた。


願いを叶えると、私の寿命を使い果たすことになる。


「渚、仲良く死のう」


ナイフを手に、裕也が迫ってくる。


私を殺すのが、嬉しくて仕方がないという狂気の笑みを浮かべて__。