「これ、私が作ったの」


食欲のなさそうな裕也のために、作ってきた__のは建前で、実のところ外でデートしたくないだけだ。


あの時のように、いつ車に飛び出すかもしれない。


ある時は駅のホームで身を投げようとした。


しっかり私の手を掴んで。


いっそのこと1人で死ねばいいのに、私を道連れに巻き込もうとするから厄介だ。


何度も言うが、私はまだ【三鷹裕也を消す】という願い事は叶えてはいない。


それなのに一体、どうしたというのか?


その横顔に、かつてイケメンの見る影もない。


頬はこけ、目は落ち窪み、クマができている。


全てに対して投げやりな感じだ。


「ほら、食べて元気を出して」


手作り弁当を勧めるが、反応はない。


なかなか箸をつけない裕也を見兼ね「はい、あーん」と、卵焼きを口に運ぶ。


それでも真一文字に口を閉ざす裕也が、私の目を見つめて言った。


「口移しで食べさせてよ」


「口移し__?」


「そう、できるだろ?俺のことが好きなら」


断るという選択肢はない。


久しくキスをしていないから、ひょっとしたら大丈夫かも?


なるべく噛まなくていいプチトマトを浅く口に含み、裕也の口に押し込んだ。


唇を離そうとした瞬間、ぐちゃぐちゃのトマトが押し戻されてくる。


「がっ‼︎」


やっぱりダメだ。


やっぱり__。