「裕也‼︎危ないから早く‼︎」


シャツがべろんと伸びる。


全体重をかけて引っ張るも、裕也は動かない。


このままトラックに轢かれて死ぬ気なのか⁉︎


クラクションが鳴り止まない。


私は咄嗟に掴んでいた手を離した__その手を、裕也に掴まれる。


「は、離して‼︎」


必死にもがくが、裕也は遠くを見ているだけ。


それなのに、私の手をがっちり掴んで離さない。


肩を叩いても、足を蹴って暴れても、絶対に離そうとしなかった。


トラックはもう目の前。


「渚、一緒に逝こう」


「嫌⁉︎離してよ‼︎」


「俺と一緒に、逝きたくないの?」


その時だけ一瞬、いつもの裕也に戻った。


目に力が宿り、怒りの表情になる。


「永遠に、俺と一緒に居たくないの?」


「離して‼︎」


「離さない」


「離してよ‼︎」


「離さない、ずっと」


そう言って、裕也は私を強く引き寄せた。


胸の中にすっぽり抱き締められる。


暴れようがないくらい強く、潰れるほどに。


「渚、これでずっと一緒だよ」


「__いや」


「渚、愛してる」


クラクションが、すぐそこで鳴り響く。


ああ、私は連れて行かれるんだ。


地獄の果てまでずっと__。