「桃子、おはよう‼︎」


私が極力、明るい声で挨拶をすると、桃子は少し微笑んだ。


「おはよう」と。


やっと少し元気が出てきたようだ。


あの【事故】から1週間、ようやく学校は普段の日常を取り戻しつつあった。


それでも桃子は、3日ほど学校を休んだ。


無理もないかもしれない。


もしあの時、バケツの水を頭から被らなければ、照明は桃子を直撃していた。


柴田麻里恵じゃなく、桃子が死んでいただろう。


もちろん、麻里恵があんな仕打ちをしなければ、私がハシゴを押して舞台装置を落下させることもなかったのだが。


麻里恵だけじゃなく、総勢9人のうち、2人が死んだ。


残りの7人も怪我をして、未だに休んでいる。


悪戯が招いた、不幸な事故。


水浸しになった舞台で、なんらかの力が加わり、骨組みが崩れた__というのが、表向きの原因とされた。


真相は私にしか分からない。


「お昼、一緒に食べようね?」


私がそう言って微笑むと、桃子は不思議そうに首を傾げたが、やがて頷いた。


「ありがとう」


「お礼なんていいよ」


「ううん。本当にありがとう__葉月さん」


私に向かってお礼を言った。