きっと桃子はそんなこと望んでいない。


誰かを恨んだり、復讐したり、桃子は望んでいない。


もしここで麻里恵を傷つけたなら、その麻里恵のために涙を流すだろう。


あんな仕打ちを受けたのに。


だからダメなんだ。


こんなことしちゃ、ダメだ__。


「てかさー、マジでウケんだけどー‼︎」


流れている音楽が大きいからだろう、麻里恵は大声で仲間に話しかけた。


その間も、別の生き物のように手は動いている。


「渚のために頑張って踊るんだってー!バッカじゃね⁉︎お前みたいなブタがいくら練習しても、踊れるわけないっていうのー‼︎パラパラなめんなって話!」


一字一句、私の耳にはっきり聞こえてくる。


「あんまりブスだから、私ずっと息とめてたー‼︎」


「私も‼︎てか、あの顔あり得なくね?」


「だよねー‼︎あたしならとっくに死ぬわー!」


周りの奴らの声も、私の耳にはっきり聞こえてくる。


「ブスはブスらしく、おとなしくしてろって‼︎なんなら、あたしらで殺すー?もう視界に入るだけでゲロっちゃうからさー、いやマジで‼︎」


麻里恵の言葉に【殺すコール】が始まった。


そろそろ、最後のキメポーズに入る頃だろうか?