三鷹裕也(みたかゆうや)は、サッカー部のキャプテン。


身長が高くて顔が小さくて、少し長めの髪はいつもキマっている。


もちろん女子人気は1番で、男子からの人望も厚い。


私なんかが見るだけでも、申し訳なく感じられるくらい三鷹くんは完璧だった。


三鷹くんにはきっと、桜庭さんみたいなキラキラした女の子がお似合いだ。


私みたいに太っていて醜い女なんて、眼中にさえ入っていない__はず?


「おい、落ちたぞ」


「っ⁉︎」


振り向いた私は、石像のように固まった。


み、み、三鷹くんが、私を見ている⁉︎


私に、話しかけてる⁇


「ほら、携帯。あ、俺と一緒の機種じゃん」


「あ、あの__」


「早く取れよ」


「ごめん‼︎」


半ば奪い取るように携帯を掴むと、お礼も言わずに私は教室から飛び出した。


廊下をどすどすを走るが、すぐに息を切らしてトイレに駆け込む。


個室に入り、便座に腰を下ろす。


呼吸は落ち着いたはずなのに、胸のドキドキがおさまらない。


携帯を両手で包み込む。


まだ、三鷹くんの温もりが伝わってくる。


こんなことって。


こんな【奇跡】みたいなことが起きるなんて__。