「私はブスだから。柴田さんの言うことは正しい」
ある時、そう言って力なく桃子は笑った。
けれどそれは、諦めとも悲しみともつかない、とても優しい笑顔。
恐らく桃子という女性は、人を許す広い心の持ち主なんだ。
だから柴田さんも相手が悪かったかもしれない。
これが私と同じように傷つき、涙し、怒り、やり返すのであれば、イジメ甲斐もあっただろう。
どう攻撃しても、怒りを全て吸い込んでしまう桃子に、次第に柴田さんがイラついているのが分かった。
だから、方向転換することにしたらしい。
「篠田さーん、良かったらお昼、一緒に食べない?」
そんな猫なで声に、桃子がギョッと身を引いている。
それもそうだろう。
昨日まで散々【ブス】やら【デブ】やら言葉の槍を投げつけていたんだ。
それが手のひらを返したようにすり寄ってきても、一体誰が信じられる⁉︎
私は柴田麻里恵を睨みつけた。
「なんか、ずっと悪いことしてたなって。麻里恵、反省したんだー」
「はぁー⁉︎」
誰が麻里恵だよ、気色悪い‼︎
言葉にして罵り返してやろうかと思ったが、それより先に桃子が許してしまった。
「なにも気にしてないからいいよ。一緒に、食べよっかな」
そう、これが篠田桃子なんだ。



