指も、胃液も、涙も嗚咽もうめき声も。
希望も絶望も、悲しみも苦しみも、なにもかもを全て吐いた。
吐き捨てた。
「あーあ、きったね。でも、俺なら食える。渚の吐き出したものならなんでもな」
そう言うと、裕也は【指】をつまんでポイッと口に放り込んだ。
むしゃむしゃと、咀嚼する音が聞こえる。
がりっと、骨が砕ける音が聞こえる。
美味しそうに、私が吐き出した指を食べるその口を見ているだけで、気が遠くなっていく__。
私はそのまま気を失った。
次に目が覚めると、体が鉛のように重い。起き上がれないほどに。
首だけ動かすと、散らばった指が見えた。
ああ、さっきのは夢じゃない。
現実の悪夢だ。
もう私は、ここから逃げ出せない。
この地下室じゃない。そうじゃない。三鷹裕也という地獄から、抜け出すことはできないんだ。
裕也を【殺す】しかない。
そうだ。でもそれには、ここから出る必要がある。
ここから出るということは、私が助かるということ。
私【だけ】が助かり、裕也に忠誠心を示す。
それは即ち、南くんを見殺しにするということ。
もっとも効果的なのは__。
【私が南くんを殺す】こと。



