「こいつの指、食ったら助けてやるよ」
にんまり笑う裕也に、言葉もなかった。
鉄槌が下されると覚悟はしたが、その要求は私の想像を遥かに超えている。
これならまだ1発や2発、蹴られたほうがマシだ。
「そんなに好きなら、食えるだろ?俺は食えるよ。渚の指も耳も、目ん玉だって食える。舐め回してな」
「やめて」
「なんだよ。それが愛ってもんだろ?」
「狂ってる」
言葉にして初めて、そう実感することができた。
この男は狂っている。
「ほらどうする?早くしねーと、おっ死ぬけど?」
裕也が顎で指し示す南くんを、私も見た。
未だに息をしているのが不思議なくらい。
私のせいでこうなった。
でも、私なら助けられる。
「本当に、助けてくれるの?」
「ああ。俺が約束、破ったことあるか?」
「__わかった」
傍に放り出されていた、ビニール袋を引き寄せた。
その中に手を突っ込むと、ビニールが激しくガサガサと音を立てる。
南くんには悪いが、虫だと思えばいい。
硬いイモムシだと__。
指先で1つ掴むと、胃液がせり上がってきた。
それを強引に飲み込み、目を閉じて口を開けた。
強烈な血の匂いが鼻の奥まで突き刺さるが、私は指を口の中に含む。



