裕也が南くんの手を、踏みつけた。
血まみれの手を。
「あああっ‼︎」
驚くほど大きなうめき声は、私を竦(すく)みあがらせるのには充分だった。
でも生きてる。
南くんは生きてる。
「さすがにまだクタばってないか?ま、時間の問題だけどな」
「__裕也?」
私は有りっ丈の勇気を振り絞って声にしたが、蚊の鳴くような掠(かす)れた声しか出なかった。
のっぺりと、裕也が振り返る。
「__ど、どうするの?」
「なにが?」
「私と、南くんを、どうするの?」
そう尋ねながらも、答えを聞きたくない思いで自分の体を強く抱き締める。
あまりに寒いのは、この地下室が原因なのか、それとも私の心がそう感じるのか?
「渚は、どうしたい?」
「私は__南くんを病院に連れていってあげてほしい」
「分かった」
あっさりと裕也が頷いた。
「それなら渚が死ぬけどいいの?」
「えっ⁉︎」
「俺を裏切った罰」
「でも南くんは関係ないじゃない⁉︎」
「こいつは、渚を誑(たぶら)かした罰。助けるのは1人だけ。こいつか、渚か」
「そんな__」
絶望が喉に詰まって、言葉を押し込んだ。
裕也が階段を登っていく。
私と南くんと【究極の選択】を残して__。
「じゃ、2人で仲良くな」
扉が、閉ざされた。



