聞きたくない。


耳を塞いで、裕也の言葉をかき消したい。


思い切り叫び声を上げながら__。


「指を1本、切ろうとしたら簡単に寝返った。お前のことなんてどうでもいいから、家に帰してくれってな。お前の価値なんて、このゴミ以下なんだよ」


つま先で指を蹴散らす。


方々に散らばっていく、8本の指。


もう南くんには、それぞれの親指しか残っていない。


そもそも、無事なのか?


「拾えよ」


「えっ?」


「今から持ち主に帰しに行かないとな。お前の生半可な甘えが生んだ結果だ。だから責任を持って拾い集めろ」


腕組みをして、遥か上空から冷酷な言葉を振り下ろしてくる。


でも私には、逆らう力はない。


それに、南くんのことも気がかりだ。


私のせいで夢が潰えた。いや、今からこの指を持って病院に運べば、夢は繋がるんじゃ?


そんなことはないと思いつつ、そうでも言い聞かせないと、とてもじゃないが指を摘むなんてこと私にはできない。


遺体のように転がっている指に、手を伸ばす。


触れる瞬間に目を閉じ、指先で挟み込んだ__‼︎


まだ、柔らかい。


吐き気とともに、指を放り投げる。


吐くものが何もないのに、私は吐き続けた。


胃が痙攣を起こしてもなお、吐き続けたんだ__。