「これ、人差し指か?」


と、裕也が南くんの何指か分からない指を1つつまんで言った。


私たちの足元には、残骸のように指がいくつも転がっている。


それは確かな【証拠】だった。


「あいつはキーパーしか才能ないから、指を切ってやった。2度とボールが持てないようにな。でもまだマシじゃね?キーパーじゃなかったら今頃、その袋に入ってたの【足】なんだからさ」


一瞬だけ、それを想像してしまった。


袋の中に入っている、切断された足。


吐き気がこみ上げてくるのも構わず、裕也が続ける。


「これでも俺は優しいからさ、親指は勘弁してやったんだよ。なんか痛そうだったし」


「み、南くんは?」


「へぇ、まだあいつのこと心配するんだな」


つまんでいた指を放り投げた、裕也が立ち上がる。


「いいこと教えてやろうか?」と。


その声に導かれるように、顔を上げた。私はそう、躾(しつ)けをされているから。


裕也の言う通りに、裕也の言いなりに、裕也の思う通りに、裕也の望むままに、裕也の仰せの通りに。


だから、これからとっておきの秘密を聞かせてやろうという【悪魔】の顔を見上げたんだ。


私は分かっていた。


今から裕也が言うことが、私を奈落の底に突き落とすのだと__。


「お前の大事な大事な南くんはな、残念なことに泣いて謝ったよ。お前なんかより、サッカーが大事だと」