ぼとり。
不穏な音をさせて落ちた黒い塊から転がり出てきた。
第2関節から切断されたであろう、どこの指が分からない指先。
爪は色を失くし、血が固まって黒ずんでいる。
「ひっ‼︎」
息を飲んだ瞬間、心臓が締め付けられるように痛む。
思わず腰を抜かして、その場に尻もちをついてしまった。
足が指に触れそうになり、短い悲鳴を上げて後ずさる私を、裕也は愉快そうに見下ろしている。
「ほら、もっとちゃんと確認しろよ。南くんの覚悟なんだから」
「っや、やめて__やめて‼︎」
「お前のために指を切ったんだよ」
両手の人差し指と中指を何度か合わせ、鋏のジェスチャーをしながら近づいてくる。
虫のように横たわる指。
切断された部分から、肉と骨が見える。
あれは、どの指なんだろう?
そして、あの袋には他にもまだ__?
だって、袋の重さは指1本分じゃないからだ。決して重いわけじゃないけど、指1本分じゃない__。
裕也が屈み、私の目だけを見ながら袋をゆっくり持ち上げる。
ちょうど私の目の高さから、袋を逆さまにして振ったんだ。
ぼとり。
ぼとり。
ぼとり。
いくつもの指が、落ちてくる。
ぼとり。
ぼとり。
ぼとり。
私は、悲鳴を上げることさえできなかった__。