「渚、こっち来いよ」


「えっ、でも__」


「いいじゃん‼︎」


腕を引っ張られて、三鷹くんの胸に飛び込む。


ギュッと抱き締められる。


息ができないほど、その温もりに包まれて私は三鷹くんの匂いを吸い込んだ。


体育が終わったばかりだからか、少し汗臭い。


ようやく体が離れると、顎をクイッと上に向けられた。


切れ長の目が、私を見下ろしている。


ゆっくり目を閉じるとやがて、唇が舞い降りてきた。


三鷹くんとの初めてのキスは、学校の踊り場。


たまに生徒が行き来するのもお構い無しで、私たちはお互いの唇を貪った。


ようやく、この時が来たんだ。


私が三鷹裕也の彼女となる日が。


最終目的といってもいい。


ここにたどり着くまでに起きた、様々な出来事が蘇る。


朋美との仲を引き裂き、優衣を傷つけ、美奈にいたってはその命を奪い取った。


こうして私が生きてキスできるのも、美奈のお陰。


時々、心に影がさすけれど、大好きな三鷹くんの息遣いがそれを吹き飛ばしてくれる。


「渚、好きだよ」


「私も大好き」


そう答え、再び口づけた。


誰にも渡さない。


私だけの三鷹くん。


絶対に誰にも渡さない。


そう思っていたのに__。