それはアッという間だった。


スマホを奪い合う私たちは、屋上で取っ組み合う。


私の髪の毛を力の限り引っ張る美奈の手を、思い切り払った。


バランスを崩した美奈が、そのまま後ろに倒れる。


けれどそこは、何もない。


空中に放り出された美奈が、視界から消えた。


真っ逆さまに落ちたんだ。


私の手にスマホだけを残して__。


恐る恐る覗いてみると、手足がおかしな方向にねじ曲がっている。


校舎の裏側だから、発見されるまで時間がかかるだろう。


急いでスマホの動画を削除した。


優衣宛てにメールを送る。


【ごめんなさい、私が突き飛ばしたの】


足元に携帯を置き、私は屋上から逃げ出した。


大丈夫だ。


誰にも見られていない。


何食わぬ顔で教室に戻った頃、ようやく校内が騒がしくなった。


その前に、自分のスマホを開く。


アプリのマイページに入ると、そこに居たはずの【青木美奈】が消えている。


代わりに__。


私の寿命が【20年】に増えていた。


美奈の寿命を奪い取ったんだ。


これで生き延びることができる。


でもそれより私が1番に思ったことは、全く別だった。