美奈がスマホを突き出した。


薄暗い画面には、ある動画が映し出されている。


【私が、優衣の背中を押した】


少し離れたところからだが、それが朋美じゃないことははっきり分かった。


私の犯行現場だ。


もう言い逃れはできない。


「これさぁ、みんなに拡散したらどうなるかなぁ?」


嬉しそうに話す美奈を睨むが、グッと押し黙るしかない。


美奈の目的が分からないからだ。


「もう朋美はダメ。容疑が晴れても返り咲くことはできない。いい気になってる優衣も、ウソをついたことがバレたらハブられるってわけよ」


「__どうしたら黙っててくれる?」


それはとても冷たい声だった。


自分でも驚くほど。


「黙ってたところで、私が得することないもの。それにね__これをバラすのは、別の目的もあるの」


「別の、目的?」


「そう。なんでか分からないけど、南くんはあんたのこと気に入ってるみたいね?でもこれを見れば、あんたなんかより、私を選んでくれるはず」


「南くんのことが?」


「そういうことだから、お気の毒さま。謝ろうが土下座しようが私に取り入ろうが、これはバラされる運命だったの。ワンクリックで終わるから」


美奈の指先が、画面に触れる。


そうなれば終わりだ。


優衣や南くんは関係ない。三鷹くんに軽蔑されてしまう__。


私は、美奈の手首に飛びついた。