「そんなに好きなんだ?でも、彼は私のものだから」


腕組みをして、私を睨みつける。


私が付き合うはずだった。


寿命さえあれば【課命】して、私が三鷹くんと付き合うはずだったんだ。


「あんたなんか、裕也と釣り合わないわよ」


鼻で笑う優衣は、そう吐き捨てると行ってしまった。


シャンパンの甘い力か、好きな人と一緒に居た高揚感からか、今にもスキップでもしそうな背中が遠ざかっていく。


気づけば私は息を押し殺して、その背中に近づいた。


優衣が振り向きもせず、階段を降りようと手すりを掴む。


私の手が、その背に伸びる__。


でも__やっぱりできない‼︎


優衣を突き飛ばすなんてことは、私にはできない。


自分を変えるのも、他人の仲を引き裂くのもいい。


けれど、誰かを傷つけるなんてこと。


そうしないと、私の寿命が尽きるのだとしても__。


伸ばしかけていた手を引っ込めた時、さきほどの優衣の言葉がリフレインする。


「あんたなんか、裕也と釣り合わないわよ」


「あんたなんか、裕也と釣り合わないわよ」


「あんたなんか、裕也と釣り合わないわよ」


それはまるで、私のことを見透かされているようで。


本当の私を嘲笑っているようで。


私は、どうしても聞き流すことができなかった__。


ドン。


背中を押すと、優衣が階段から転げ落ちていく。


面白いように。